しいたけの支配

百均の商品陳列はとても巧みで、レジの手前に大量のチップス(素材を活かしたタイプ)が並んでいた。レジ待ちのあいだは、その棚を眺めるほかない。しかも、ごぼう・オクラ・玉ねぎ・えだまめ・3種のきのこ・しいたけと、なんとも愉快なラインナップである。食欲と収集欲がダブルでかき立てられ、まんまとカゴに入れていた。

最初は、ごぼう・3種のきのこ・えだまめを選んだ。ごぼうチップスは別メーカーのものを食べたことがあり、お墨付きの美味しさであった。えだまめもクセになる安定の美味しさなのだが、正直ミ◯ノという豆のプロフェッショナル・スナックをよく食べているため、なかなかハードルが高くなっており、あっさり食べ終えてしまった。

さて問題は、3種のきのこである。まず第一に、初体験であった。しいたけ・マッシュルーム・エリンギの3種。しいたけチップスは別メーカーのものを見かけたことはあったが食べたことはなく、ほかの2種にいたってはチップスの姿自体が新鮮だった。馴染みあるきのこの、初めてみる一面にどきどきする。正直、旨みが凝縮されているであろうことは、容易に想像がついた。

まずマッシュルームを食べた。えっ……君ほんとにあのマッシュルーム……? 想像していたより何倍も美味くてどぎまぎする。震える手で次はエリンギを口に入れた。ばっっっっ……かうめえ……。そもそもエリンギは天ぷらにしても味がはっきりしているし、味噌汁に入れても、味噌汁というより「エリンギ汁」と呼びたくなるくらいには主張が強い印象だったので、さすがだなと唸った。そして最後にしいたけである。まず、でかい。シンプルにでかい。でかいから最後の楽しみとしてとっておいた。まあどうせ美味いに決まってるよな、とダイレクトに衝撃を受けないよう、いったん斜に構えてから食べた。


うますぎる!!!!!!!!!

これはうますぎる!大発明じゃん!!何事?!!!うますぎるって!!!!!ガリッガリの食感も旨味もすべてが脳を直撃してくる!!!!!!

それ以来、私は異常に百均へ通い、レジ横まで直行して、しいたけチップスを大量買いする奇行を繰り返した。ほとんど毎日繰り返した。たまに、店員さんに「こいつ毎日買っていくじゃん……きも……」と引かれることを恐れて、わざと遠くの百均まで足を運んだりもした。気づいたら1日2〜3袋のしいたけチップスを食べる妖怪と化していた。

そして何日か経ってから私は気づく。なんか最近お腹が重くてうっすらずっと痛いな、と。原因なんてどこをどう辿ってもひとつしかないのは分かっているが、認めたくなかった。「コーヒーの飲み過ぎかなあ」などと言い聞かせていた。コーヒーなんてもう社会人になってから常飲していて、今まで何ともなかった訳だから、無理があるのだ。身内の犯行だと気付いていながら認めたくなくて「違う、違う」と言い聞かせている気分だった。そんな状況に陥ったことはないが、本当にそんな気分だった。そして、ついに私は事実と対峙する。

[ 🔍 しいたけ 食べ過ぎ 腹痛 ]

すると、AIとか名乗る怪しい何者かが、食物繊維は消化に時間がかかるだとか、便秘の原因になるだとか、なんかいろいろ親切に教えてくれた。つまり「お前はしいたけの食べ過ぎで腹痛になっているんだよ」ということである。うるせえ黙りやがれ。

それからというもの、しいたけを見るたびに、大量のしいたけが腸の中でうごめいている様子が頭の中で再生されるようになった。満員電車のように、腸の中を埋め尽くし、押し合いへし合いしている様子が。腸が爆発するのが先か、肛門が巨大化するのが先か、はたまた私の身体と脳を支配してしまうのか……もしも何百年後、科学博物館の展示物リストに『しいたけ人間』とあったら、私のことを思い出してください。

※2025年3月1日 note投稿

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