読む前は勝手に恋愛小説かな?と思っていたが、全然違っていた。読了して感じたのは、「この物語は前向きになれるお仕事小説だ」ということだった。
この物語には「根本的には仕事が、そして人のことが、好きな人」がたくさんいる。心から、労働自体を嫌悪していたり、お金さえ稼げれば人の役に立っているかは興味ないと割り切れたり、そういった人は出てこない。みんなベースは「もっとよく働きたい、人の役に立ちたい」と思っている。
だからこそ、山添も藤沢も悩んでいる。「やりたいし、もっとできるのに(役に立ちたいのに)、できない」。2人に立ちはだかる壁は、「やりたいことが思うようにできない、させてくれない、自分の身体」にあった。
そんな共通の壁にぶつかっていた2人が、互いの行動や存在に影響を受け、「自分は人の役に立つことが好きだ」という塞がっていた本音を思い出す。お互いがお互いの存在によって突き動かされ、衝動的に助け合ううち、どんどん「人の役に立ちたい気持ち」が掻き立たされていく。そんな2人を、急かしたり責めたりすることなく、栗田金属のメンバーや山添の元上司は見守り、祈り、影響を受け、与えている。
思うようにならない身体を抱え、それをも自分なのだと認めるしかなく、抱え込みながら生きていくその困難は壮絶なのだと伝わってくる。できなかったことができるようになることが希望や光だとすれば、逆に、できていたことができなくなることは、底の見えない深い闇に沈んでいくようなものだろう。そんな深い闇でもがいていた状況から、また今までとは違う新たな夜明けに向かって走り出す。互いを駆動力にして。容易には見ることのできない光を、2人は見つめているのだと思った。
※2025年3月1日 note投稿