見えない世界への入り口|遠慮深いうたた寝

つやつやとした質感と、白地に青のデザイン。そんな陶板画の装丁が、あまりにかわいくて手に取った一冊。そして、裏表紙のどのエッセイも結局は文学のない世界では生きられない、ということを告白しています。……」という紹介文(引用文)のはじまりにがっつり心を掴まれ、購入しました。

読み進めていくと、映画や本の話もあれば、小説のように読めるエピソード、ミュージカルにまつわる話など、多種多様な内容(題材)のエッセイが連なっています。それに、派手な出来事が起こる感じではなく、日常にひそむ秘密を解読するようなどきどき感があり、このどきどき感が文学に通ずるのかもと気付きました。言葉の背後にただよう気配の妖しさ、複雑で壮大な世界の入り口に立っているような緊張感が、癖になります。

同じ簡潔な一文でも、無意識にあっさり書かれたものより、混乱と逡巡の末にようやくたどり着いた文章の方が美しい。……(『遠慮深いうたた寝』河出文庫 p263より)

このことは文章だけでなく、生活においても、あらゆるものを淡々と消費しながらあっさり過ごすより、心を旅させ遠回りをしながら暮らすことで奥行きが出る。その奥行きを予感させる人や言葉に、引力があるのだろうと思いました。

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